僕が出逢った十人十色

20代の集大成を迎える井口陽平さんの覚悟 Vol.1

1年間やってきたBARを閉店した理由

井口 陽平
1991年生まれ。大阪出身。NPO法人若者応援コミュニティとりのす代表理事、株式会社リンガーリンク代表取締役、 SDGsネットワークおかやま若者部会代表、一般社団法人Community rapport理事を務め、エンターテインメント×人材育成をテーマに、 大学生と地域住民を繋ぐ「まちなか大学祭」や、企業の魅力を知るバスツアーなどを企画・運営している。

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身を削りすぎて心が付いていかなくなった

ケンフィー まずバー編は終了ってことで、お疲れ様です。 確か(バーを)始められたのは2018年の11月ぐらいですよね。(バーを経営するにあたって)大変だったこととかってありますか?

井口 陽平 2018年11月にバーをオープンさせて、2019年の10月末に閉店したから、ちょうど本当に1年間やね。 1年で辞めたことについて「なんで辞めたんですか?」って言われると、結局、人がいなかったんよ。 まず私がいないと営業が成り立たないし、営業時間(19時~24時)に全部出て、他のこともしなければならないってなると、 もう体力的に無理だった。そうなった時に「これはいいタイミングかな」と思って(バーを)辞めた。

ケンフィー そうだったんですね。

井口 陽平 辞めると決めてからは、実験的に「こういうイベントしよう」とか、 「こういう手法をやってみよう」とか、もし5年~10年後に飲食店を本格的にやる機会があったときの参考になれるようなことは 全部やりきろうと考えてやってきたんだけど、正直なところ、夏以降ぐらいから挑戦することが少なくなってきてしまったと感じてて・・。

ケンフィー それは店の時間でがっつり取られてるからですか?

井口 陽平 時間を割きすぎたからアイデアがなくなって挑戦が減ったというよりは、 他のことする時間がなくなったからという感じかな。これは私が飲食を甘く見てたんだけど、 めちゃくちゃ準備や経営に時間を割かされる上に、接客も自分でするってなると、もう時間がいくらあっても足りない状態になってて。 もともといろんなことをしながら、いろんなところからインスピレーションを受けて、やりたいことが決まっていくタイプなんだけど、 他のことをする時間がなくなると、自然にやりたいことも減っていって、あと前回の取材の後、ものすごく身を削りすぎて鬱病になってしまって。

ケンフィー そんなことがあったんですか?!

井口 陽平 この取材で初めて言うけど、2階以上の建物に行くと「もう飛び降りた方がいいんじゃないか」とか 「ここやったら早く死ねるのかな」とかっていうのをずっと考えてたの。今年の2月(取材日:2019年12月6日)とかは特にひどかった。 その時やりたいことばかりやって、ついに体が追い付かなくなったかと思ったね。体調不良は今までもあったんだけど、 心がやられるっていうことの経験が初めてやったから。自分は精神的に強いと思ってたんだけど、お医者さんやカウンセラーとかに聞いた時に 「それは風邪と一緒ですから、心の病気は絶対かからないとは言い切れないんですよ」みたいな話をしてくれて、すごく納得した。

辞めることは立ち止まることじゃない

ケンフィー 今は大丈夫なんですか?

井口 陽平 恐らく今も多分治ってはないんだろうけど、こういう病気は明確な対処法がないから、 自分でセルフカウンセリングをずっとしていって、少しずつ良くなっていったと思う。この精神的なものには、 一生付き合わないといけないものだけど、「病気ですよ」って言われた時に、自分の中で「これはやりたくてやっていたことなんだけど、 ずっとやらないといけないことなのか」など取捨選択がすごいできたと思う。

ケンフィー これまでやってきたことを取捨選択できるいい機会になったんですね。

井口 陽平 もともと「辞める」ということが嫌いだったけど、 「これを辞めたら、こっちがもっとうまくいくかもしれん」とか、「今辞めて、またやりたくなったらやればいいやん」とか思ったら、 「ずっと全部やり続けることって美しいことかな」って疑問に思えてきたんよね。それで何個か事業もやめたし。

ケンフィー 井口さんがバーを辞めるとTwitterで知ってから、僕も影響受けてる部分があって、 2年近くやってきたステージの企画を、全部マニュアル化して、いったん区切りつけようって決められたのは、 恐らくそれが大きかったと思ってます。

井口 陽平 「辞めてよかった」とは思わないけど、でもそれすごく共感できる。 本当は辞めるとか引き継ぐっていうのは立ち止まることじゃないんよね。だけど「辞めること=立ち止まるもの」だと思ってしまう。

ケンフィー 本当にそう思います。(今回の井口さんのように)辞めることで動き始めるものもありますし。

井口 陽平 飲食店を1年経営して、うちの会社としても少なくない金額を出資してやってたけど、 出資した分も全部回収し終えて、閉店時には黒字だったんよね。だから、いろんな経営者さんに(バーを辞めたことを)報告した時に、 2つに分かれて。「え?もうちょっと続けてたら絶対もっと売上が上がったのに」って言う人と「今やめてよかったね」って言う人。 でも個人的にすごく仲いい人たちから「よかったね、今やめて。続けてたら絶対破滅するから」って言われた時に 「あぁ、(店を辞めたのは)間違ってなかったのかな」って思えてきたんよ。

ケンフィー 経営の面でも良いタイミングだったんですね。

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