僕が出逢った十人十色
20代の集大成を迎える井口陽平さんの覚悟 Vol.3
BARを閉店して感じた「何かを辞める」ということ

井口 陽平
1991年生まれ。大阪出身。NPO法人若者応援コミュニティとりのす代表理事、株式会社リンガーリンク代表取締役、
SDGsネットワークおかやま若者部会代表、一般社団法人Community rapport理事を務め、エンターテインメント×人材育成をテーマに、
大学生と地域住民を繋ぐ「まちなか大学祭」や、企業の魅力を知るバスツアーなどを企画・運営している。
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仕事は増えたけど毎日活き活きしてる
井口 陽平 それでバーを辞めてからの方が仕事してる時間は多くなってしまったんよね。
仕事の時間は多くなってしまったけど、全部自分が本来やりたかったことをやってるから、特に苦でもない。
ただ、今月(2019年12月)、体調が悪くなってるんだけど、店をやり始めて鬱になったことを考えたら、今は活き活きと生きれてるなって感じる。
だから、自分の選択は何も間違ってなかったなって思う。みんなが、そういうのを「そうだよ」って言ってくれてるみたいで、
だから「一緒にやろうよ」って声も増えたんだと思う。話がちょっと変わるけど、ツイッターとかもしばらく投稿できてなかったんよ。
ケンフィー 確かに最近ツイート増えましたよね。
井口 陽平 そうやって言われると恥ずかしいんやけど(笑)。ただ、多分信じられないかもしれんけど、
店をやっているとき、本当に書きたいことがなかったのよ。でも店を辞めて、次のステージに行った途端に、課題をシェアし合いたくなって。
「これっておかしくない?」「これってもっとよくできるよね」みたいな。「これのやり方はこうだよね」「こうしたらいいよ」っていうのは、
対面でしか言いたくなくて。「こういうことあるよ」とか「こういう世界もあるよ」みたいな呟きを自然に発信してるのよ。
やっぱり本当に次のステージに行ったのかもっていうのは感じてる。ツイッターで発信するのが増えてきたとか、気付いてもらえてよかった。
気づいてくれんと寂しいじゃん(笑)。
ケンフィー 業界の外側の勉強をしようと幅広くやられたNPO以外の活動を一旦辞めたことも、間違ってなかったんですね。
井口 陽平 そっちの勉強ばかりしてると、もう戻ってこれんくなるなと思ったのよ。
飲食店を続けると、他の飲食店さんに挨拶回りしたり、飲食店の繋がりを作っていくことで時間が全部使われるし。
仕入や店だけの帳簿などの作業が次々に出てきて、もともとやりたかったことをやる時間が減っていって。
ケンフィー 1日は24時間しかないですもんね。
「辞める」経験の方が大事
井口 陽平 でも多分、うぬぼれとると思われるかもしれないけど、自分は何をやっても上手くいくのよ。
だから飲食やっても上手くいったと思うよ。でも、そこに力を費やす、飲食店のオーナーさんになるっていうのは別に夢でも何でもなかったし、
その先に見たい景色があって、それを方法論としてやってるだけだから。もともと目指してたところが、かすみ始めるぐらい忙しくなって、
「あ、これは戻らないとな」と感じた。でも今回3回目のインタビューの話を頂いたときに、最近、何か始めるとか、何かに挑戦するという話で溢れてるなって思ったのよ。
何かを選択してやめるっていう経験の方が、本当は大事で、自分も会社の社長やってるけど、事業を辞めることは結構あるから。
例えば起業して辛かったこととか、サラリーマンに戻りたいなって思ったこととか、山のようにあると思うけど、そういう話って取り上げられないよなって思って。
ケンフィー 欧米諸国と比べて、日本は開業届を出した人が廃業するのは結構少ないらしいですよね。
井口 陽平 だから、儲かってないのにやめないのよ。自分がやりたかったことじゃないのに辞めないし。
10年間、50年間、生き残っている企業なんてちょっとしかない中で、自分はNPO活動を法人として3年半やってきたけど、
やり始めることと辞めることが半々ぐらいだったと思う。でも、2年前はそれを分かってなかった。辞めるなんて恥ずかしいし、
そんな恥ずかしいことできないと思っていたんだけど、今は辞めることって恥ずかしいことじゃないよなと思うようになって。
だって次に向かうためのものだから。
ケンフィー それすごく分かります!
井口 陽平 辞める前、自分が鈍感になってた。もう家と会社と店の往復になって、気付いたら、
お客さんの付き合いで朝の3時~4時まで飲んだりとか。それも別に楽しかったよ。ただ、これって私じゃなくてもいいなと思ったんよ。
もちろん、あの店でしか出会えなかった学生と出逢えたりとか、あの店でしかできなかった繋がりができたりとか、すごく良いこともたくさんあったけど、
どんどん感度が鈍ってきてるなと感じてて。店を辞めた途端に、もう全部が解放されて、今はすごく良い意味でセンシティブになれた。
だから、そういうのがツイッターの発言にも現れているのかもしれない。
20代の集大成を迎える井口陽平さんの覚悟